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植物はそのものの美しさを、素直に描く。 


植物、特に花を描くのは簡単そうで難しいのは、花そのものが絶対的に美しく、絵は近づくことすらできないからです。
そこで考え方を変えて、花の美しさに尊敬の念を込めて、素直に描くことにしたところ、
ようやく筆がスムーズに運べることが出来ました。

今回は彩色を的確に描くためには、第一色目のモノクロで描く段階が大切であることに焦点を当てました。
その理由は、「色」は、明るさ暗さの「明度」と、赤や青の「色相」、色の濁り具合の「彩度」から構成されており、
3つの要素のひとつである「明度」だけを先に塗れば、絵の全体像が見えることになります。
それにより第二色以降の色を、存分に彩色できるからです。


 
 
  実の色のバリエーションの美しさにひかれて、野葡萄を描くことにします。
   
 
線画が完成しました。
細部のちょっとした陰影まで
正確に拾って描きました。
   
  彩色の段階に入りますが、
最初の一色は、
漫画家が使用する墨汁を使って
モノクロで描きます。
   
動画「色のぬり順」 1′13″のカット使用 


この墨汁の特徴は、
墨汁を塗った上にいろいろな色を
塗り重ねても、
決してにじまないことにあります。

絵具はもちろん、通常の墨汁でもにじんでしまいますが・・・。 



   
  墨汁は圧倒的に濃いため
たっぷりの水で溶いて、
正確な濃さを試し塗り用紙で
吟味してから
彩色に取り掛かかってください。 
   
   二色目以降の彩色では、
同じ色を何度も重ね塗りすることは
控えた方がいいですが、
この段階では納得のいくまで
何度も墨汁を重ね塗りして
ハイライト気味のモノクロ写真のように
なるまで、塗ってください。
   
  第二色目以降は、明度よりも
色相や彩度などの色味を意識して
彩色していきます。 
   
   
   
   
   
   
   
  絵が完成しました。

色鮮やかな実の色や
葉の細かい 濃淡は
第一色のモノクロで描く段階が
しっかりしていたからこそ出来たのです。
 
いろいろな花の絵をご紹介します

 
  バラの花が陽の光を通して、透き通るように輝いています。
その透明感は背景を漆黒にしたからです。

漆黒の色にするには透明水彩絵の具ではなく、ポスタカラーの黒を2度塗ることで、むらのない漆黒の黒を表現することが出来ます。
この黒を上手に使えれば、植物画は「どうしたの!」と言われるくらい一気に上達します。 
   
  ホトトギスの花は愛らしく、私の大好きな花のひとつです。
その花の愛らしさを表現するには、柔らかい線を描くことがとても大切です。
線は描く人の気持ちが出ますから、柔らかい船を描くには、自分がホトトギスの花になったような優しい気持ちで描くことがポイントで、優しい線を描くことが出来ます。 
   
  わが町鎌倉は6月にもなるとあじさいが競い合いますが、
この花の特徴は、ひとつひとつの花弁が微妙に色合いが違うことです。

特に彩色では手抜きせず、ていねいに色の違いを塗り重ねることが大切です。
塗り重ねると言いましたが、透明水彩の魅力は塗った色の上に、色を重ねることにあり、それにより微妙な色合いが表現できるのです。 
   
  カサブランカは、周囲を圧倒する凛々しさありますが、それは形の強さにあると思います。
それ表現するには特に線画が大切で、輪郭をクッキリと、多少誇張気味に誇り高く描くと良いでしょう。